体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その23(最終回)

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その22 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 部長に車椅子を押してもらって今度は階段を下りる。これは上りの時に比べてかなりの恐怖体験だったが、なんとか無事にエレベータの所までたどり着く事ができた。5階に戻ると部長の病室へと戻り、ここから自分の病室まで一人で戻った方が良いと部長が言う。俺は部長に別れを告げて部長の病室を後にした、三日後にまた屋上で会う約束をして。

自分の力で車椅子を漕ぐのは痛みを伴ったが、俺はにやりと笑ってそれに耐える。しかし再びエレベーターまで戻る直前、俺は廊下をうろつく姉の姿を見つけた。姉はどうやら寝起きの様だった… この姉はいつも寝起きみたいな格好をしているけど。

姉「ともくん、こんな所で何をしてるの?」

俺は姉に自分の病室まで連れて行って欲しいと頼もうとした。

俺「ちょうど良かった。姉ちゃん悪いけど…」

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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その22

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その21 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 その夜、案内嬢が俺のベッドの隣のリクライニングチェアで寝息を立て始めた後、俺はまず自力で車椅子に乗り込まなければならなかった。しかも案内嬢を起こしてしまわないように静かに事を運ばねばならない。時折走る激痛に声を上げないように歯を食いしばりながら、俺はベッドの構造を上手く利用してなんとか車椅子に乗り込む事ができた。

次は部屋から出て廊下を通り、5階に行くためにエレベーターに乗り込まねばならない。健康体であれば何でもない距離だが、腕の力を使って車椅子を進ませる度に体に痛みが走る。あまりの痛みに思わずニヤリと笑う。どうしても部長に会わねばならない。

エレベーターホールに着いてボタンを押し、しばらく待つとエレベーターがやってくる。到着を告げるチャイムがエレベーターホールに響き渡り、俺は思わず顔をしかめる。案内嬢が追って来てはいないか背後を確かめ、エレベーターに乗り込んだ。5階に到着してエレベーターを降りると、廊下の様子は俺の病室のある階と全く同じだったが、廊下から覗く事のできる病室ははるかに豪華だった。床にはカーペットが敷かれていたりして、病室というよりホテルの部屋と言った方が近い。

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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その21

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その20 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 その後数日俺の周辺は慌ただしかった。案内嬢が俺の病室に戻ってきてベッド脇の定位置に落ち着く。今となっては彼女の存在に嫌な予感しか感じない。いつか彼女が枕の下に隠したPDAの存在に気づいてしまのではないかと俺は気が気じゃなかった。あの夜、案内嬢が気を失った後で何が起きたのか聞かれたが、他の工作員達が来るまでの出来事で特に話す事はないと俺は嘘をついた。案内嬢は俺に疑いの眼差しを向ける。どうやら俺の言葉を信じてはいなさそうだ。

月曜になると部長がいつも通り俺の病室の花を交換しにやって来た。運良く案内嬢は眠っている。

部長「私の願いを込めて作った。」

俺「誰にも気づかれない様にこれを持っていってくれ。」

俺は部長にPDAを渡す。部長はしばらく左手に持ったPDAと右手に持った花のブーケを見比べていたが、

部長「わかった。早く良くなって。」

俺に花を渡すと他に何も言わず部屋から出ていった。

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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その20

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その19 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

俺「おい…」

まだ体が少し痛むが、俺は手を伸ばして案内嬢の体をゆすって起こそうとする。だが彼女はうめき声を上げて寝返りを打つだけだった。それにしても毎晩よく椅子の上なんかで熟睡できるなこの人。寝心地悪いだろうに。

俺「おい… 起きろよ…」

案内嬢「……」

俺「おい…! 起きろってば!」

俺はとうとう我慢できなくなり、案内嬢の耳元で少々大きな声でささやく。

案内嬢「何? こんな時間に何の用?」

まだ眠たそうな声で答え、案内嬢は目をこすりながら体を起こす。

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体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その19

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その18 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 その日の夜遅く、俺は案内嬢と今後について話し合った。リハビリが上手くいけば、俺は銃火器の取り扱いを含む戦闘訓練を受ける事になっている。その厳しさを想像すると少々気が重くなるが、今の俺には必要な事だ。

俺「姉ちゃんは一体どうなる?」

俺がこの話題を出すのはこれが初めてだった。

案内嬢「別の工作員が証人保護プログラムでアメリカに移住する事を薦めているけど、彼女は行きたくないと言っているわ。お姉さんはあなたと一緒でなければ嫌みたいね。」

俺はため息をつく。いずれこの件について姉と話し合わなければならないだろう。たとえ別れがつらくとも、今の俺の側にいない方がお互いのためだ。

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