清田くん達の映画を考えて、それから見えるもこっちの話

まず最初に大事な話

文化祭ステージでの上映が終わり、もこっちと清田くん達の映画に対する生徒からの評価の明暗が分かれてもこっちが落ち込んでいますが、まず最初に当たり前だけど大事な事を言います。

文化祭の出し物って別に勝ち負けじゃないですからね。

何度も言いますが、初めての映画撮影で予定より短くなったとはいえもこっちが一本撮り切った事はすごいと思います。

これを踏まえた上で、本編のわずかな描写から見えてくる清田くん達の映画撮影から考えていきましょう。

清田くん達の映画撮影

まず喪197 モテないし少し進行するで清田くん達が「バカっこいい動画」を撮ると決まった時、その日の放課後すぐに撮影を始めてしまい、それがあまりにも「清田くん達らしくて」私は思わず苦笑してしまいました。

こういうまず行動してから問題点を解決していくタイプの生徒は実際にいるし、そういう生徒を中心に集まったグループもまた行動が早いです。

そういえば麗奈ちゃんや二木さんにもこのタイプの傾向があるので、二木さんが清田くん達にすぐに馴染めた理由がよく分かります。

想像ですが清田くん達の撮影は、

「まずどんな動画を撮るかだけどさ、なんか良いアイデアない?」

「この前Youtubeで見た○○○ってのが面白かったな」

「いいね、じゃあそれを参考にとりあえずやってみようか」

こんな感じで始まり、短い動画を一本撮るたびにみんなでアイデアを出し合って撮影を進めたんでしょう。

清田くんは監督というより男子のまとめ役で、岡田さんは女子のまとめ役を自然とこなしてうまく回ったと思います。

たとえ失敗しても責任が誰かに集中する事がないから気楽にアイデアを出せるし、みんなで作ってるんだってなるのでそりゃ楽しいに決まっています。

わざわざこの時のネモに「楽しそう」だなんてモノローグをつけて、「谷川先生も意地が悪いなー」と思ったりもしましたが、

それはさておき、

ここで思い出して欲しいんですが、喪201 モテないし寝ながら考えるで吉田さんがもこっちに言った「内輪で盛り上がれば上等」「最低限お前の周りの奴にウケりゃいい」というアドバイスがありましたね。

私もこのアドバイスは正しいと思います。ただそのアドバイスを正しく実行していたのは清田くん達でした。

まさに「俺らが楽しければいいっしょ」的なノリで作ったバカっこいい動画が他の生徒にもウケたのは、観客の多くが清田くん達と同じノリを好む高校生だったからですね。

もこっちの映画撮影は色々な面で清田くん達の真逆だったと考えると話が早いです。

もこっちの映画それ自体はさておき、もこっちと清田くんの映画に対する姿勢にはもう一つ大きな違いがあります。

映画撮影がそれぞれに与える影響は?

バカっこいい動画がウケて、岡田さんとグータッチして、教室ではクラスメートをねぎらいながら後夜祭終了後の打ち上げまで企画して文化祭を満喫している清田くんですが、

果たしてこの経験が清田くんの人生にどれだけの影響を与えるのか考えてみると、大した影響はないように思えます。

喪97 モテないし学食で食べるでは将来の夢がある人が羨ましいと言っていた清田くんですが、この経験を機に映像関係の仕事を目指すという発想にはならないでしょうね。

個人的には映像プロデューサーなんか向いてる気がしますけど、普通に生きててもそこそこ人生が楽しい清田くんがわざわざ不安定な職業を選ぶほどの成功体験とも思えません。

その一方で自分の映画が大ウケして、大学では演劇集団を立ち上げて人気が出て、その勢いで有名作家になる事まで妄想していたもこっち。

初期から読んでるファンの多くは「そりゃもこっちはそうだよね」と特に驚きもなく受け止めたと思いますが、改めて清田くんとの違いを考えてみると、もこっちのこの個性はある種の才能と言っても良い気がして来ました。

私個人の体験の話になりますが、高校の時、将来の夢や目標を持っている友人はほぼ皆無でしたね。

もしかしたら心に秘めた夢があったのかも知れませんが、友人から聞く願望のほとんどは「彼女が欲しい」とか「良い大学に入りたい」くらいで、それが悪い訳ではないんですけど、もこっちの様に具体的な将来像を考えて友人に話す事ができる高校生はかなり少ないと思います。

自分の中の願望を自覚してそれを言葉にできる時点でそれは一つの才能というか、少なくとも人にはない何かがあるという証明なんじゃないでしょうか。

いやまあ、だからと言ってライト姉妹のように、もこっちが作家を目指して努力をする漫画を読みたいかって言うと、そういう事を言いたい訳ではないんです。

「もこっちが映画を撮りました、思ったよりウケなくて落ち込みました」では長く続けた物語のオチとしては弱いので、もう一盛り上がり欲しいなってのが正直な所です。

以前某所のコメントに「最近のもこっちには欲がないから見ててつまらない」というのがあって私は「なるほどな」と思いました。

でも人の願望や欲望ってのは簡単にはなくならないし、その意味では黒木智子というキャラが持つポテンシャルは作品中で群を抜いていると今でも私は思います。