体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その18

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その17 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

 今日は9月の第1月曜日、つまり本来なら夏休みが開けて最初の登校日だったはずだ。俺はもう二度と会えないかも知れない昔からの友人の事を考えて一日中憂鬱だった。午後には部長が小さな花のブーケを持って部屋にやってきた。そこらの道端に咲いていた花をつんで来たらしく、おせじにも綺麗とは言いがたかったけど。

部長「あなたが早く良くなるように願いを込めて作った。」

俺がここへ入院してからずっと、部長は月曜日になると必ずこうして花を持って来ては、俺のベッド脇の花瓶の枯れた花を新しい花と取り替えてくれていた。だがこうして花を持って来れるという事は、部長には外出する自由があるという事だ。つまり部長にはある程度行動の自由が許されているという事で、俺は少し安心した。

自分が今どこの病院にいるかは解らなかったが、よくある普通の病院とは明らかに雰囲気が違っていた。それについて俺は誰にも説明を求めなかったし、誰も俺に説明をしようとはしなかった。俺の頭はそういう事を考えるにはまだ少し意識がはっきりとはしていなかった。

日が暮れると姉が部屋にやって来た。俺はプリンがあまり好きではないので、晩飯時になると俺のデザートのプリンを奪いにやって来るのが姉の日課になっていた。その間ごく稀に会話をする事もある。

姉「それで… しばらくともくんに後遺症が残ったりするの?」

俺のプリンを意地汚く食べながら姉が尋ねる。俺は姉に早くプリンを食べて部屋から出て行って欲しいと思った。姉が同じ部屋にいるとどうやら俺は少し落ちつかない気分になる様だ。

「あなたが手術を受けている時に医者がおかしな物体を見つけたの… あなたの頭の中に。」

俺は案内嬢の言葉を思い出していた。つまり… 俺が今回の件に巻き込まれたのは偶然でもなんでもないという事だ。案内嬢はその事を知っていた、だからこそこうして今でも俺の側に残っている。

俺「前にも言ったろ。あと少し治療を受ければすぐ良くなるよ。」

姉「つまんない。」

プリンを口いっぱいに頬張りながら姉が言う。

姉「それじゃあ私の “弟が元気になるまでお世話しちゃうぞ計画” が台無しじゃないの。」

俺「物を食いながらしゃべるなよ。あとあまりキモい事を言わないでくれ、姉ちゃん。」

姉「キモいのは私じゃなくてともくんでしょ。」

姉にいつも調子が戻っていた。

姉「あの人もキモいよ。」

姉がいびきをかきながら深い眠りについている案内嬢を指さす。俺は肩をすくめようとしたがその瞬間体に激痛が走り、急いで隣にあった点滴のモルヒネ注入ボタンを押す。

姉「だいたいちっともアメリカ人には見えないし。」

俺「それは確かに。」

その点には同意する。

俺「でも外見はともかく本当にアメリカ人みたいだぜ、見てな…」

俺が口笛でアメリカ国家のメロディを奏でる始めると、一番の終わりに差し掛かる頃には眠っている案内嬢の目から涙がこぼれ落ちる。これはベッドで横になっている以外にやる事のない俺が見つけた良い暇つぶしの一つだった。

姉「それにしても二度と学校に戻れないのは残念ね。」

舌をつきだし、カップに残ったプリンを最後まで舐め取ろうとしながら姉が言う。思わず俺は顔を背けた。

姉「学校には私を待ってる恋人が10人もいるのに。みんな私にフラれちゃったと思うだろうな。」

俺「姉ちゃんに恋人なんていないだろ。」

姉「ともくんが知らないだけでしょ。」

俺「賭けてもいい、姉ちゃんに恋人はいない。」

姉「それはともかく、お父さんとお母さんは今頃家に帰って来てるだろうね。もしかしたら私達が駆け落ちでもしたと思ってたりして。きっとお父さんともくんにカンカンよ。」

俺はギクリとする。まさかまだ誰も姉に俺達の両親に何が起こったのか話してなかっただなんて…

俺「姉ちゃん… 父さんと母さんは死んだよ。」

姉はプリンのカップを手にした腕をゆっくりと下げる。

俺「俺達が狙われたのにも理由がある。父さんが “社交クラブ” という組織に俺達を売ったんだ。」

姉はベッドのレールをつかんで下を向いてしまう。

姉「知ってるわ… でもともくんも知っていたのね。」

俺は思わず笑顔になる。一週間以上も毎日俺の所にやって来ていながら、俺を傷つけないために両親の事は秘密にしようとしてくれていたのだ。まさか姉がこんな風に他人を思いやる事ができるだなんて思ってもいなかった。

姉「ともくん… あなたの怪我は私の責任だわ。私のせいで車椅子の男達がやって来てともくんまで巻き込んでしまった。」

…つまり姉は全てを知っている訳ではないって事か。俺の顔から笑顔が消える。もし姉が俺の頭の中に埋めこめられている物体の正体を知っていたら、今の俺がいつ爆発するか解らない時限爆弾の様なものだと知っていたら、こんな風に毎日俺の病室を訪ねて来るはずがない。俺はその事をしばらく姉には黙っておく事にした。

その時、俺の右隣で寝ていた案内嬢が大きなあくびをする。どうやらお目覚めの様だ。

案内嬢「すごく良い夢を見ちゃったわ〜。」

そう言いながら片目をこする。もう片方の目は大きな包帯で覆われたままだった。

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その19 に続く

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