喪21(今江先輩着ぐるみハグ回)が単行本で1ページ増えたワケ – ワタモテ語り

前置き

連載中の漫画が単行本になるとき台詞が少し変わったり作画が加筆修正されたりするというのは皆さんすでにご存じのことと思いますが、ワタモテもWEB掲載時と単行本とで微妙に変わっているということがよくあります。

単行本での修正点をまとめてくれている 谷川ニコまとめWiki さんという昔からのファンサイトがあるので興味のある方はチェックしてみると面白いと思いますが、その中でも興味深いのは 喪21 が単行本化にあたって冒頭に丸々1ページ追加されたという件です。

加筆修正どころか1ページ丸ごと追加というのは他の漫画でもあまり聞かない話なので、今回は当時を振り返りながらその理由に迫ってみたいと思います。

喪21が1ページ増えたワケ

喪21がガンガンオンラインで公開されたのは2012年6月21日(Watamote Place – ワタモテエピソードリスト参照)ですから、もう7年以上前の話になります。当時の国内の某掲示板のワタモテスレではこんな議論が繰り返されていました。

「もこっちをハグした着ぐるみの中身は今江先輩と決まったわけではない」

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なかなかにショッキングな意見というか、特にアニメ以降にワタモテを知った方はこんな議論があったことも想像がつかないのではないでしょうか。議論と言ってもおそらくお一人が強硬に主張されていただけで当時も他の住人から、わかりやすく言えば袋叩きにされていましたが、私はそんな議論を見守りながら「面白いことを考える人もいるもんだな」と思っていました。

そこで私なりにそういう意見が出たのは何故なのかと考えながら喪21を読み返してみるとある事に気づきます、

「今江先輩に着ぐるみを着てもこっちをハグする理由がない」

少しややこしい話なのでぜひお手元に第3巻を用意して喪21を読み返しながら読んでください。喪21というのは学校に友達が一人もいなくて寂しい思いをしていたもこっちが、ゆうちゃんが文化祭に遊びに来ることによって高校生活で初めて楽しいと思う事ができ、同時にスキンシップに飢えてるもこっちがゆうちゃんに抱き着かれようとするもかなわず、再び一人ぼっちになった所に着ぐるみが現れてもこっちをハグする、というお話です。

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察しの良い方はもうお分かりかと思いますが、今江先輩はもこっちがぼっちで寂しい思いをしており、スキンシップに飢えているという事を一体いつ知ったのでしょうか?

読者の視点を排除して今江先輩の視点のみに絞って考えた場合、文化祭の準備を手伝ってくれた下級生が(喪20)、文化祭最終日の終了1時間前に一人でいる所を見つけたので、偶然その場にあった着ぐるみを着て風船を渡してハグをするという少し奇妙な行動をしたという事になり、いくら今江先輩がワタモテでは珍しい聖人キャラと言ってもこれでは少々やりすぎです。

ここまで理解していただいた上で喪21の冒頭に追加された1ページを見てみると、このページでは今江先輩が大勢いる生徒の中でもこっちを特に気に掛けるようになるきっかけが描かれているという事がわかってもらえると思います。

アニメでさらに増えた描写

この辺の問題はアニメと原作を比較するとより分かりやすいかも知れませんね。1年の文化祭における今江先輩ともこっちの関係の描写はアニメ化にあたってさらにいくつか追加されています(第11話)。

・カッターで手を切ったもこっちが廊下を走っていて先輩とぶつかるシーン

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・文化祭初日に階段で一人ぼっちでいる所を先輩に見つかるシーン

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・先輩がネモや岡田さんにもこっちの事を尋ねて色々と察するシーン

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これらのシーンは単にアニメの尺の都合で追加されたわけではなく、今江先輩がもこっちをハグするというクライマックスのためにちゃんと理由があって追加されたという事が分かっていただけるかと思います。そのおかげかアニメ11話は名曲「そこらの着ぐるみの風船と私」とあわせて何度みても泣ける素晴らしい回となっています。

シーンを追加するにあたっては谷川先生とよく話し合ったと思いますし、私の個人的な意見としては1年の文化祭に限っては原作よりアニメの方がお話がよく描けていると思います。

アニメの演出の影響がここにも

余談ですがアニメ11話には他にも現在のワタモテに大きな影響を与えたある演出があります。

ゆうちゃんと別れてから今江先輩にハグされるまでの光と影の演出です。

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陽の存在であるゆうちゃんを光のあたる場所に立たせ、陰の存在であるもこっちを影に立たせて対比し、ゆうちゃんと別れて以降ずっと影をまとったままだったもこっちを、着ぐるみを着た今江先輩が再び陽のあたる世界に引っ張り出すというこの演出は、喪97でのネモの待ち伏せシーンでも効果的に使われ話題を呼びました。

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これに関しては何か証拠があるわけではないのですが作画の先生がアニメの演出を参考にしたに違いないという確信が私にはあります。もし喪97がアニメ化されるとしたら今度は映像でどの様な感じになるのかアニメ11話を見ながら想像するのも楽しいのではないでしょうか。

結び

さて今回の記事タイトルである「喪21が単行本で1ページ増えたワケ」ですが、上で紹介した谷川ニコまとめWikiさんには「最後の着ぐるみの中は誰かわらりづらいとの声に応えた?」との記載があります。私はこれに加えて、今江先輩がもこっちをハグすることに谷川先生が説得力を持たせようとしたからではないかと考えています。そしてこの時の試行錯誤が後のアニメ11話がより良いお話となる事にいくらかでも貢献したと考えれば、私が今回この記事を書いた理由もなんとなくわかってもらえるのではないでしょうか。

ちなみにもう言う必要のないことではありますが、喪115の今江先輩卒業式回で着ぐるみの中身は今江先輩と確定しています。そして喪115と併せて読むことによって1年の文化祭のこのエピソードもさらに感動的なお話となった事もまたあえて言う必要のないことではありましょう。

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という訳で今回のお話はこれで終わります。6~7年前の話をなぜ今さらしたのかと言うと、というかこれまでずっとこの話をしなかったのは何故かというと、重箱の隅をつつくように作品のアラを探すような野暮なことはしたくないし、またそのような行為をしていると誤解されたくもないと思っていたからです。

ですが今なら初期のワタモテの話を落ち着いてできるような気がするので、また気が向いたらこんな記事を書くかもしれません。その時にお時間があればまた読んでもらえると嬉しいです。

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喪21(今江先輩着ぐるみハグ回)が単行本で1ページ増えたワケ – ワタモテ語り」への3件のフィードバック

  1. あれ、いつのまにか記事が!
    21話の冒頭は後から追加だったんですね。
    あのエピソードがあったから、挫折せずに読み続けて、
    修学旅行編以降の神ストーリーに出会えたんでした。
    また気が向いたときで良いので、こんな感じの記事書いて頂けたら
    嬉しいです(^-^)

  2. カーラジオから「今夜の、ワタモテ千夜一夜は…」とかいって、グラスの氷がカラコローンとかいって流れてきそうなステキなエッセイです。
    読み直してみます。ありがとうございます

    • こちらこそありがとうございます。ラジオのパーソナリティみたいに上手くしゃべれる自信があれば Youtube でワタモテを語る配信したりしたいんですけどね :)