体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その13

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その12 の続きです。初めての方は その1 からどうぞ。

案内嬢「私の不手際については謝罪するわ。仕方なかったとは言え、あなたを危険な目に合わせてしまってごめんなさい。」

俺「危険どころの話じゃない。ここ数時間、車椅子に乗った変態共に追いかけ回されてたんだぞ。」

案内嬢は真剣な顔つきなる。

案内嬢「それじゃあ彼らはもうすでにあなたの命も狙っているのね… 私が考えていたよりも事態は進んでいるみたい。」

友人「”もうすでに”ってどういう意味? あなたは智貴くんの危険を知りながら何もしなかった訳じゃないって言いたいの?」

案内嬢「複雑な事情があるのよ…」

案内嬢が事態の説明を始めようとしたが、部長はまったく興味が無いといった様子で俺の横を歩いて通り過ぎると劇場の最前列に座り、座席に置いてあったポップコーンを拾いあげる。

部長「栄養補給。」

そう言うとまるでロボットの様に一定の速度でポップコーンを食べ始めた。俺の姉はその間、手にしたマシンガンをまるでおもちゃの様にガチャガチャといじり回していた。俺は弾倉に実弾が装填されていない事を祈る。

案内嬢はそんな俺の愉快な仲間たちを見てため息をついた後こう言った。

案内嬢「それであなたは車椅子の暗殺者達に命を狙われて、しかも生き残ったと言うのね?」

友人「ただ生き残っただけじゃないわ! 三人も返り討ちにしてやったのよ!」

案内嬢は疑いのまなざしを俺に向ける。

案内嬢「本当なの?」

俺はうなづく。

俺「街道沿いのケンタッキーで一人、父さんが働いている山本ゴムのオフィスビルで二人。」

俺はシャツをまくり上げると、暗殺者から奪った拳銃を見せた。友人も自分の戦利品を案内嬢に見せる。

案内嬢「素晴らしいわ…。」

そう言ってしばらく考え事をした後、案内嬢は話を続ける。

案内嬢「智貴君、話があるから私に付いて来てちょうだい。お友達は安全のために当分の間はここに残ってもらいます。」

友人「冗談じゃないわ!」

友人が叫ぶ。

友人「ここまで人を巻き込んでいながら、後はまるで囚人みたいにここでじっとしていろって言うの!?」

案内嬢「あなた達自身のためなのよ。それに智貴君だってこれ以上あなた達を危険な目には合わせたくないはずだわ。」

俺「すぐに戻ってくるよ。」

すぐに戻ってこれる確信など無かったが、俺はそう言って友人をなだめる。劇場を後にする時、案内嬢は友人の方を振り返るとこう言った。

案内嬢「念のために言っておくけど、この映画館には監視カメラが設置されているし私の他にも工作員が潜伏しているわ。ここから逃げ出そうなんて考えない方が身のためよ。」

友人は腕を組んで「ふん」と鼻を鳴らす。部長がこれまでの話をちゃんと聞いていたかどうか俺にはよく解らなかった。

案内嬢は俺を連れて廊下に出ると階段を上がり映画館の映写室へと入る。映写機が各劇場の長方形の映写窓に向かって所狭しと並んでいた。案内嬢は俺を椅子に座らせると、予備の映写機を作動させる。

案内嬢「彼らは “車椅子の暗殺者社交クラブ” と呼ばれる、この地球上で最も恐れられる最精鋭の準軍事的傭兵集団よ、足が無いけど、慈悲の心も無いの。」

俺は鼻で笑うが、案内嬢は真剣な顔のまま映写機にテープを取り付け、狭い映写室のコンクリートの壁に映像を映し出す。8ミリで撮られた映像はぼやけており、少なくとも1980年以前に撮られた映像の様だった。

案内嬢「私の父よ。」

映像では黒いスーツを着て黒いサングラスをかけた一人の男が、拘束具を着て車椅子に座る老人を尋問していた。彼らは英語で話していたので会話の内容はよく解らなかったが、「ケベック」「テロリズム」という単語と、繰り返し出てくる「委託殺人」という言葉だけなんとか聞きとる事ができた。車椅子の老人は捕らわれた事にまったく危機感を抱いていない様に見える。

尋問の途中、どこからともなく足の無い別の男が出現した。映像には映っていないがおそらく天井から侵入したのだろう。足の無い男は黒スーツの工作員を羽交い締めにすると、その頭をつかんで部屋の真ん中にある鉄製のテーブルに何度も叩きつける。足の無い男が工作員の頭を血まみれにしている間、部屋の外からは銃声と「やつらに侵入されたぞ!」という叫び声が聞こえてくる。そして4〜5人の車椅子の集団が部屋に突入して来た所で映像は終わっていた。

案内嬢「私は自分の父親に会った事がないの。」

体の不自由な暗殺者達が俺の命を狙うのはどう考えてもお前らが悪い! その14 に続く

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